2012年07月05日

著者インタビュー
日中国交回復への道―周恩来と愛新覚羅溥傑一族

著者インタビュー『流転の子 最後の皇女・愛新覚羅嫮生』(中央公論新社)

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周恩来総理の主催した午餐会で。前列右から父愛新覚羅溥傑、母嵯峨浩、嫮生(左後方)、周恩来、祖母嵯峨尚子、大叔父愛新覚羅載濤、作家の老舎、一公民となったラストエンペラー愛新覚羅溥儀、通訳を務めた王效賢(写真提供福永嫮生氏)



月刊『潮』8月号(7月5日発売・潮出版社)に、『清朝最後の「皇女」がみた日中友好への道筋―100年先のビジョンをもった稀代の政治家周恩来がみた、女性の真の品格とは―』というタイトルで、4ページにわたり著者インタビューが掲載されました。

 今回は、これまでのような敗戦、満州国崩壊から、大陸での母浩と娘嫮生さん(次女)の凄惨を極めた一年五か月の流浪を描く「第二章 流転の子」がメインとなるものではなく、その後、日本に帰り着いた母娘が一六年後に周恩来の尽力で父溥傑と再会を果たし、日中の架け橋となる部分、「第三章 再会」中心のインタビューです。

 「第三章 再会」は伊豆・天城山で一九歳の慧生(長女)を失った悲しみの中、高度な政治判断で果たされた父と母娘の再会や、日中国交回復へと進むなか、両国の相克に揺れる溥傑一家の愛と再生の姿を詳細に描きました。
 また、拙著では日中外交の内実を知る人物に迫り、国交なき時代に周恩来総理のブレーンとして活躍した王效賢女史(現中日友好協会副会長)、経済外交で日中を結んだ周斉女史(元駐日中国大使館一等書記官)が「証言するのは今回で最後」として取材に応じて下さいました。

 一九六一年、周恩来は、再会を果たした溥傑一家のために愛新覚羅一族らも交えた午餐会を盛大に開きます。周恩来は永住を決めて帰国した浩と違い、娘の嫮生さんが日本への帰国を望んでおり、溥傑一家の意見の対立が深刻であることを知り、細やかな配慮を見せます。周恩来はおもむろに溥傑と浩に向かって言った。

以下、掲載誌月刊『潮』8月号より抜粋

―「嫮生さんが帰りたいなら、帰らせてあげればよろしい。無理強いして中国に留めるのはよくありません。若い人はよく変わります。もし後になって中国に来たいと思ったら、いつでもパスポートを申請すればよろしい。(中略)嵯峨家は娘を愛新覚羅家に嫁がせました。愛新覚羅家の娘が日本人と結婚するのも悪くありませんよ」(『流転の子』より)
 当時は国交がないため、自由往来の証として嫮生さんに周恩来が渡した「国務院総理周恩来」と書かれた名刺は、今も嫮生さんのもとにある。そして、この言葉に押され、嫮生さんは日本で生きる道を選ぶ。本岡さんは語る。
「政治家として一〇〇年先の視点をもっていたのが周恩来です。日本人を断罪すれば世論や共産党内ではもっと評価されたかもしれない。しかし、“日中両国には二〇〇〇年の歴史があり、関係がおかしくなったのはわずか五〇年あまり、それは過去のことで終わったことである。日本軍国主義は敵として戦ったけれど、日本の人民もまた犠牲者であり、人民を不幸にすることを私たちは絶対に望まない”というのが周恩来の考えです。目先の国益を主張すると本当の意味での国益を損ねることがわかっていた。(中略)ひとりの若い娘に対する細やかな心情に人間としての品格、同時に政治家としての周恩来を見ることができます」―

 戦後も歴史の渦に翻弄されながら、市井の人間として生きる姿を貫いた女性の半生をこの誌面で少しでも知って頂けたら幸いです。
posted by noriko-motooka at 18:18| コラム

2012年01月01日

新春のお喜び申し上げます

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構想二十有余年、取材執筆四年の歳月を要した『流転の子 最後の皇女・愛新覚羅嫮生』(中央公論新社)が、昨夏、刊行されました。多くの皆様が手に取って下さり、メディア書評にも数々取り上げて頂きましたことを心から感謝申し上げます。

 拙著は激動の日中間を生きた女性とその一族の愛と絆、人間の再生を描いた歴史大河ノンフィクション。戦争で犠牲になった声なき人々への鎮魂と平和への祈りを込めて書き上げた長編です。長く読み継がれる作品に育てたいと切に願います。これからも皆様にお導き頂ければ幸いです。

 あなた様にとって新しい年がよい年になりますようお祈り申し上げます。今年も宜しくお付き合い下さいませ。

2012年1月
ノンフィクション作家 本岡 典子
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2011年10月25日

「感謝と祈りを込めて」読者の皆様へ

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 構想二十有余年、取材執筆四年の歳月を要した『流転の子 最後の皇女・愛新覚羅嫮生』(中央公論新社・8月25日発売)の出版から、二ヵ月が経ちました。
 その間、多くの方々が拙著を手に取って下さり、たくさんの心温かい手紙やメールを頂きました。また、メディア書評にも数々取り上げて頂き、拙著が皆様に支え導かれて参りましたことを心から感謝申し上げます。

 新著は満州国皇帝・愛新覚羅溥儀の実弟・溥傑を父に、日本の天皇家と縁戚関係にある嵯峨侯爵家令嬢・浩を母に持つ愛新覚羅嫮生の語りを軸に、激動の日中間を生きた女性とその一族の愛と絆、人間の再生を描いた歴史大河ノンフィクションです。

 両国で八十人を超える関係者を取材し、公文書・外交・防衛史料を解読しつつ、名もなき人々の手紙や手記、私家本を発掘し検証しました。このような新旧の資料に加え、戦争体験者が次々世を去る中、貴重な関係者の新たな証言を得て、「通化事件」など、連座した人々の壮絶な最期を描き出すことができました。拙著は敗戦後の満州の闇に光を当て、戦渦に巻き込まれた人々の人生を浮かび上がらせた物語でもあります。

 戦争の記憶が遠ざかるいま、二つの国で流された血の悲しみと贖罪の思いを一身に抱え、市井の人間としてつましく生きる「愛新覚羅嫮生」という女性の半生を通し、戦争で犠牲になった声なき人々への鎮魂と平和への祈りを込めて書き上げた長編です。

 拙著を手にとって下さった読者の皆様にこの場を借りてお礼申し上げます。有難うございました。十年、二十年と長く読み継がれる作品に育てたいと切に願います。それが戦渦の中で朽ちた声なき方々から託された私の使命でもあると思っております。これからも読者の皆様にお導き頂ければ幸いです。

 お読み下さった方々の心のどこかにこの物語が生き続けますように。皆様が幸多い日々を過ごされますように。心から―。

10月25日
本岡 典子
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2011年07月07日

「男子禁制」LaLaTV(CS)放送日程 全12回

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誰にも言えない女性たちの悩みに進行役の詩人伊藤比呂美さん、ゲストに詩人であり小説家の小池昌代さんと私が本音炸裂のトークで答えます。
7月7日から始まる第17話全6回。7月21日から8月にかけて第18話全6回です。お楽しみ下さい。詳しくはこちら。

放送時間
第17話「嫉妬と執着T」
7月7日(木)22:30-23:00
7月8日(金)17:00-17:30
7月12日(火)14:15-14:45
7月14日(木)22:30-23:00
7月15日(金)17:00-17:30
7月19日(火)17:00-17:30

第18話「嫉妬と執着U」
7月21日(木)22:30-23:00
7月22日(金)17:00-17:30
7月26日(火)14:15-14:45
7月28日(木)22:30-23:00
7月29日(金)17:00-17:30
8月分放送日未定
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2011年03月16日

3.11 未曾有の震災

阪神大震災を体験したものとして
そして、今、関東に移住し二度目の激しい揺れを受けたものとして、
発生から五日間、言葉がみつかりませんでした。

一人でも多くの命が救われますように。
一刻も早く被災された方々のもとに救援の手が届きますように。

今日、嬉しい知らせを受けました。
被害が甚大だった岩手県の山田町で、私の大切な友人のお母さんが無事に避難所にいることがわかりました。彼女の母は八十九歳。艱難辛苦を生き抜き一人故郷で暮らしていました。海辺の家から不自由な足を引きずって杖をついて避難されたそうです。

メールを開いて泣きました。短い文章に故郷と母親への愛情が溢れていました。友人は女手一つで三人の子供を育てている穏やかな心優しい女性です。被災された方々と安否を気遣う家族の思いを伝えるために、彼女の了解を得て挿入させて頂きます。

「今朝いとこからの電話で、母の無事を確認できました。本岡さんに励ましのお電話を頂いてから、いつかきっとと思いながらも、なかなか夜も眠れず、テレビからのわずかな情報を頼りに過ごしていました。私が生まれて育った山田町は、小さいけれど平和な町でした。それがほんの30分ほどで津波に飲み込まれ、跡形もなくなってしまう恐ろしさ。悪夢のようです。町は消えましたが、母は生きていてくれたので、他に何も望みません。海に生きた母の強さを信じて、避難所生活の厳しさに耐えていかねばならないこれからの母の無事を祈り続けるしかありません。まずはいち早くお知らせしようと思いまして」

ライフラインが断たれたまま、彼女はまだ、お母さんの声を聞くこともできません。厳しく辛い避難所生活を生き抜いて頂きたいと思います。

*    *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *   *

死者・行方不明者一万三千人超が報道される中、この未曾有の災害から、一週間も経たたない内に東京のキー局の多くは、夜のゴールデン帯などを始め、徐々に一般番組に切り替わっています。
阪神大震災の報道は少なくとも関西準キー局エリアでは、三月二十日の「地下鉄サリン事件」までの二ヵ月は、震災報道が続いていました。

ライフラインが徐々に復旧され始め、人々が少しずつ希望を持ち始めた頃でした。一斉にTV画面が震災報道からサリン事件に切り替わった時、被災した人たちは大きなショックを受けました。「私たちはこれで忘れられる」と。この違和感を今のTVに感じます。
想像を絶する災害、被災者のもとに食糧さえ届いていないこの時期に、原発事故がまさに進行しているこの時に。TV・放送は一企業のものではありません。強い公共性を持ち国から認可されたものです。TVの速報性が今こそ必要なときに録画の娯楽番組が延々と流されることに強い違和感を覚えます。一千人単位で死者の数が報道されている時に、震災から四日や五日しか経っていないこの時期に、世界が「日本」を伝えている時に、ゴールデンタイムで娯楽番組を流し続ける国があるでしょうか?

今、TVに必要なことは、不安を煽る情報ではなく、冷静に現状を伝え、連絡の取れない被災者と安否を気遣う人々を繋ぐこと。TVカメラが現場に入ったら、生存を知らせるためにそれを求める一人でも多くの人たちの顔を映して欲しい。支援する人々の希望のメッセージを伝えて欲しい。その卓越した発信力で二つの隔たった場所を繋ぎ、支援の輪をさらに広げて欲しい。

世界でどのような惨劇が起こっていようと、それを伝えることができなければ、それは「なかった」ことになってしまいます。

被災した人たちが普通の生活を取り戻すまで、真の復興を遂げるまで伝え続けて欲しいと思います。今、TV報道の真価が問われています。

そして、日本の新しい未来を拓くために、愛と絆と再生のメッセージを伝えるために、一人ひとりが今できることをやっていくことしかありません。

想像を絶する震災を生きる多くの方々に深い敬意と命への畏れを抱きつつ。
posted by noriko-motooka at 22:44| コラム

2011年01月01日

2011年 新年のご挨拶

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posted by noriko-motooka at 18:30| コラム

2010年12月29日

「男子禁制」LaLaTV(CS) 放送日程 2011年1月5日より全24回放送

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今年7月、8月の放送に多くの反響が寄せられましたLaLaTV(CS)の人気番組「男子禁制」。【嫉妬と執着 Ⅰ】と【嫉妬と執着 Ⅱ】の昨年に続く放送が決定しました。
1月5日夜22時30分から始まる30分対談番組です。よろず相談引受人は「とげ抜き新巣鴨地蔵縁起」で第15回萩原朔太郎賞を受賞された詩人の伊藤比呂美さん。今月のご意見番は詩人・小説家で詩集「もっと官能的な部屋」で第30回高見順賞を受賞された小池昌代さんと私です。
誰にも言えない「女性たちの悩み」に答える本音爆裂の50代女3人の対談は、1月、2月放送パート1・パート2あわせて全24回です。お楽しみ下さい!

詳しくはこちらをご覧ください。

101229_02.jpg放送時間
第17話「嫉妬と執着 Ⅰ」は1月5日からです。
05日(水)22:30-23:00
06日(木)11:00-11:30
08日(土)09:30-10:00
09日(日)24:00-24:30
10日(月)26:00-26:30
11日(火)17:00-17:30
12日(水)11:00-11:30
13日(木)11:00-11:30
15日(土)09:30-10:00
16日(日)24:00-24:30
17日(月)26:00-26:30
18日(火)17:00-17:30

第18話「嫉妬と執着 Ⅱ」は1月19日から始まります。1月分放送は
19日(水)22:30-23:00
20日(木)11:00-11:30
22日(土)09:30-10:00
23日(月)24:00-24:30
25日(火)17:00-17:30
26日(水)22:30-23:00
27日(木)11:00-11:30
29日(土)09:30-10:00
30日(日)24:00-24:30
31日(月)26:00-26:30
posted by noriko-motooka at 20:15| コラム

2010年08月30日

「日経ヘルスプルミエ」ハーブのある生活

今月20日発売の「日経ヘルスプルミエ」10月号(日経BP社)で、自宅の庭で収穫したハーブを楽しむ生活とアロマの数々が取材・インタビューされています。
本岡流のヴァン・ショー(ホットワイン)やミントティーの作り方も紹介しています。
撮影はこんな感じで進みました。

1)撮影の打ち合わせ。エプロン姿で撮影されるのは初めてです。
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2)ダイニングで撮影準備中。
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3)手に持っているローズマリーはハーブティーや肉料理、ベーコンエッグなどでもよく使います。
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4)スペアミント・香菜・セージ・オレガノなども庭から採ってきました。
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5)赤い小さな花をつけているのはオレガノ。乾燥させて、トマト料理や肉料理のスパイスとして必需品です。
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6)昼から始まった撮影と取材は夕方頃まで続きました。編集者の方とこの日の撮影を終えてほっと一息。
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posted by noriko-motooka at 23:06| コラム

2010年07月07日

「男子禁制」LaLaTV(CS)

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LaLaTV(CS)の人気番組「男子禁制」の第17話【嫉妬と執着1】と第18話【嫉妬と執着2】に出演します。7月7日夜22時30分から始まる30分対談番組です。誰にも言えない「女性たちの悩み」に答える本音炸裂の対談で、7月の放送はパート1・パート2あわせて全20回です。

番組の司会・よろず相談引受人は伊藤比呂美さん。私と同年で現在、カリフォルニアにお住まいです。「とげ抜き新巣鴨地蔵縁起」で第15回萩原朔太郎賞を受賞された詩人です。今月のご意見番は詩人・小説家で詩集「もっと官能的な部屋」で第30回高見順賞を受賞された小池昌代さんと私です。
配偶者の過去の浮気を許せない女性・家庭内別居中の夫との今後の生活に悩む妻・家庭外恋愛の相手の妻に嫉妬して……など、番組に寄せられた相談を「嫉妬と執着」を切り口に三人三様の幸せの法則が爆裂します。たっぷりの時間の中、私も思いのたけを話しています。お楽しみに!

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第17話「嫉妬と執着1」は7月7日からです。
07日(水)22:30-23:00
08日(木)11:00-11:30
10日(土)17:30-18:00
11日(日)19:45-20:15
13日(火)17:00-17:30
14日(水)22:30-23:00
15日(木)11:00-11:30
17日(土)16:30-17:00
18日(日)19:45-20:15
19日(月)20:00-20:30
20日(火)17:00-17:30

第18話「嫉妬と執着2」は7月21日から始まります。
21日(水)22:30-23:00
22日(木)11:00-11:30
24日(土)16:30-17:00
25日(日)19:45-20:15
26日(月)26:00-26:30
27日(火)17:00-17:30
28日(水)22:30-23:00
29日(木)11:00-11:30
31日(土)16:30-17:00
posted by noriko-motooka at 00:52| コラム

2010年06月13日

喜望の南・アフリカの日々

100619_01.jpg日本から余りにも遠い国、南アフリカがサッカーW杯の開催で注目を集めています。私はこの国に2001年から2004年まで暮らしていました。

 ここに来たころは、その圧倒的な自然のスケールに驚きました。南アは「地球創世期のパンゲアの核」「人類発祥の地」で、地球でもっとも古い大地なのです。車を40分も走らせば、「人類のゆりかご」と呼ばれる地帯(最古の人類が生まれたところ。石器や人骨などがまだ、多数埋まっている)があります。野生動物も多く、週末には、広大な動物保護区で馬に乗ったり、サファリをして楽しみました。

100619_02.jpgヨハネスブルクから飛び出せば、北東には世界最大の動物保護区クルーガ−国立公園、北西には赤いナミブ砂漠が広がり、南の果て喜望峰にはペンギンやアザラシが棲息し、大西洋とインド洋がぶつかる海にはクジラが悠然と潮を吹いています。そのダイナミズムあふれる美しさは、日本人の想像を遥かに超えています。

 南の果て南アは民族の十字路です。先住民族のコイ・サン人が暮らしていた土地に、東部アフリカからズールー人などバンツー系の黒人が南下し、その後、17世紀に入り、大西洋側の喜望峰からは白人の入植が始まりました。インド洋からはインド人とアジア人が、さらにサハラ砂漠や紅海を越えてアラブ人が流入し築いた多民族、多文化国家です。11の公用語を有し、言語、文化、音楽など芸術に至るまで、多様なエネルギーにあふれています。

 また、世界一の格差社会でもあり、アパルトヘイト時代の負の遺産を抱えた人々の生活を激しく美しい自然が包み込んでおり、光と影、生と死が強烈な色彩を放っています。このところ、TVなどで懐かしい南アの風景に触れるたびに、この国で暮らしたかけがえのない日々が思い出され、胸が熱くなります。
posted by noriko-motooka at 00:00| コラム