2013年02月10日

『流転の子 最後の皇女・愛新覚羅嫮生』と
母校・関西学院大学

余寒お見舞い申し上げます。
激動の日中間を生きた女性とその一族の愛と絆、人間の再生を描いた歴史大河ノンフィクション『流転の子 最後の皇女・愛新覚羅嫮生』(中央公論新社)刊行から一年半が過ぎました。多くの皆様が手に取って下さり、メディアにも数々取り上げて頂きましたことを心から感謝申し上げます。長く読み継がれる作品に育てていきたいと切に願います。

拙著出版からまもなく、私の母校である関西学院大学から嬉しい知らせが届きました。14年に開館予定の関西学院大学博物館(登録有形文化財であり、建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズの設計で有名な時計台・旧図書館を2年の歳月を掛けて改装中)で、拙著の主人公である福永嫮生氏所蔵の愛新覚羅溥傑一族の歴史資料の研究・保存・展示が決まったのです。今年は私も同博物館の共同研究員・開設準備室アドバイザーとして微力ながら努めさせて頂くことになりました。

嫮生氏のご両親にあたる溥傑・浩夫妻の波瀾の人生は、これまで幾度となく映画・ドラマ・ドキュメンタリーなどで取り上げられていますが、福永嫮生氏所蔵の「愛新覚羅溥傑家歴史資料」は、個人の所有であったために、これまでほとんどが公開されることがありませんでした。しかし、日中近現代史を研究する上で貴重な資料群です。

拙著取材時に、嫮生氏所蔵の多くの資料に触れ、私はこの歴史資料群の散逸を懸念し、「何とか公に保存したい」と願ってきました。何よりも嫮生氏自身が恒久保存への強い熱意をお持ちでした。拙著にも描いた170通にも上る父溥傑から娘嫮生への手紙、16年の別離の間に溥傑・浩夫婦が交わした愛の書簡の数々は、日中の歴史のうねりの中で何度も引き裂かれながら、強い絆で結ばれた一族の生きた歴史資料でもあります。

意外にも愛新覚羅家そのものに光をあてた学術的研究は少ないのです。それは戦後における日中双方の近現代史研究において、「満洲国」が否定されるべき存在として扱われてきたことと無関係ではないと思われます。しかし20世紀の東アジア史は、近年ようやくイデオロギー的制約から解き放たれ、本格的な歴史学的研究の対象となりつつあります。このような時に、「愛新覚羅溥傑家資料」の持つ歴史学的重要性を認め、学術的な保存・研究・展示が決まったことは、『流転の子』を書いたものとしてこの上ない喜びです。

来年、開館予定の博物館は、甲山を背にキャンパス中央にそびえる美しい建物です。赤い瓦に乳白色のスタッコ塗壁の対比が鮮やかなスパニッシュ・ミッション・スタイルの建造物で、関西学院大学の象徴でもあります。開館の折には、ぜひ、お立ち寄りください。

関西学院大学図書館.jpg

関西学院大学旧図書館(博物館として来年オープン)



今、私は前作に続く歴史ノンフィクションと現代ルポルタージュなどの取材を進めております。今年も、どうぞ宜しくお付き合い下さいませ。
posted by noriko-motooka at 19:21| コラム