2011年10月25日

「感謝と祈りを込めて」読者の皆様へ

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 構想二十有余年、取材執筆四年の歳月を要した『流転の子 最後の皇女・愛新覚羅嫮生』(中央公論新社・8月25日発売)の出版から、二ヵ月が経ちました。
 その間、多くの方々が拙著を手に取って下さり、たくさんの心温かい手紙やメールを頂きました。また、メディア書評にも数々取り上げて頂き、拙著が皆様に支え導かれて参りましたことを心から感謝申し上げます。

 新著は満州国皇帝・愛新覚羅溥儀の実弟・溥傑を父に、日本の天皇家と縁戚関係にある嵯峨侯爵家令嬢・浩を母に持つ愛新覚羅嫮生の語りを軸に、激動の日中間を生きた女性とその一族の愛と絆、人間の再生を描いた歴史大河ノンフィクションです。

 両国で八十人を超える関係者を取材し、公文書・外交・防衛史料を解読しつつ、名もなき人々の手紙や手記、私家本を発掘し検証しました。このような新旧の資料に加え、戦争体験者が次々世を去る中、貴重な関係者の新たな証言を得て、「通化事件」など、連座した人々の壮絶な最期を描き出すことができました。拙著は敗戦後の満州の闇に光を当て、戦渦に巻き込まれた人々の人生を浮かび上がらせた物語でもあります。

 戦争の記憶が遠ざかるいま、二つの国で流された血の悲しみと贖罪の思いを一身に抱え、市井の人間としてつましく生きる「愛新覚羅嫮生」という女性の半生を通し、戦争で犠牲になった声なき人々への鎮魂と平和への祈りを込めて書き上げた長編です。

 拙著を手にとって下さった読者の皆様にこの場を借りてお礼申し上げます。有難うございました。十年、二十年と長く読み継がれる作品に育てたいと切に願います。それが戦渦の中で朽ちた声なき方々から託された私の使命でもあると思っております。これからも読者の皆様にお導き頂ければ幸いです。

 お読み下さった方々の心のどこかにこの物語が生き続けますように。皆様が幸多い日々を過ごされますように。心から―。

10月25日
本岡 典子
posted by noriko-motooka at 00:00| コラム