
アフリカ系アメリカ人で初のファーストレディとしてホワイトハウスの住人になったミシェル・オバマの力強いメッセージに満ちた回想録です。世界で1000万部を突破したのは、人種や性の壁を乗り越え、キャリアを積み、妻として、二児の母として懸命に生きる姿が支持されたからでしょう。
米国南部のプランテーションの奴隷労働者を祖先に持つ彼女はシカゴの貧しい地区で育った。ブルーカラーの労働者の父と専業主婦の母からたっぷりと愛情を注がれ、努力と才能でプリンストン大学、ハーバード大学法科大学院へと進み、勤め先の弁護士事務所でインターンとして現れたバラク・オバマと結ばれます。
読書家で高い理想を追い求める楽観主義者のオバマの魅力的な実像が語られ、ホワイトハウスという特別な住居を伝える臨場感あるリポートとしても興味深い内容です。
「自分が心から信じ、心から感じることだけを口にする」と語るミシェルは党大会でヒラリー・クリントンへの応援演説を行います。
「私が訴えたかったもの、それは尊厳だった。私たちは国として、それを手放してはならない。それは何世代にもわたって我が家を支えてきた中核である。私たち家族はいつだって、尊厳によるあらゆることを乗越えてきた。尊厳とは常に選択だ。そして、その選択は必ずしも簡単ではない。けれど私が尊敬する人々は、人生の中で日々繰り返し、その選択を続けてきた。」(本書より)
『回顧録は成功物語で終わらない。移民や有色人種を敵対視する言動がこともあろうか大統領から発信され、米国ばかりか世界の分断が深刻の度を増すなか、逆境を跳ね返し成長しようという「BECOMING」(原題)の精神をしっかりと受け止めたい。』(配信記事本文より抜粋)